前日まで
練習場所のマンネリ化がひどいため宮ケ瀬へ新しい練習場所を開拓しに行くことが決まった。残念ながら帰省と風邪で休む部員が多く、5人しか来れないが、今回は見て帰ってくるだけであるため、人数が少なくても大丈夫だと判断された。
当日
私は直接集合場所の矢野口へと向かった。大学を経由すると遠回りになるためである。矢野口に到着すると他の部員は見当たらない。少し着くのが早かったようだ。私は突如生まれた間隙を埋めるべく、おもむろにスマホを取り出しLINEを起動した。
!?!?!?!?!?????!?!?!?!?!!?
あまりのドタキャンの多さに絶望して矢野口ローソンの駐車場で三跪九叩頭を繰り返し、もはや八跪になろうかというその時である。まだ昇りきっていない太陽を背に、彼は颯爽と現れた。1ヶ月ぶりに練習に来た玉置先輩である。誰も練習に来ないと瞑目していた私はこの練習を続行する気力を取り戻した。
私達は尾根幹を辿っていった。前を牽く玉置先輩の背中が大きく見えた。尾根幹は都内の幹線と比べても格段に走りやすく、信号こそあるがおよそ都内にある最良の道路ではないかと思われた。
途中で尾根幹を外れ、413号に入る。直進の後左折して412号に入るとそこはもう宮ケ瀬だ。適度なアップダウンが続き、都内のような信号による連続足止めを食らうこともない。
周回コースに入ろうかと言う時、唐突に先輩が私に言う。
「オギノパンって知ってる?わりと有名なパン屋らしくて、周回コースの起点にあるから帰りに寄ろう」
私は特に気にも留めずに返事をした。そんなことより目の前に見える、これから登るであろう坂に密かに恐怖していた。
懸念していた周回コースはむしろ走りやすいものだった。緩く続くアップダウンと、テクニカルなカーブ。そして何より視界に信号が現れない点が最高だった。途中にあった展望台で記念写真を撮ってから先へ進む。
写真の右奥に見える展望台にも行けるようなので、ツーリング班が来ても楽しめるのではないか。
そして周回の最難関、メインの峠。下り過ぎではないかと思うほど下ってから私達は足を踏み入れた。
唐突だがこの峠に名前はない。すなわちここを登る者がほとんどいないと言うことである。
登れば登るほど鬱蒼としていく木々は私達の頭に多いかぶさらんとする程だった。道は荒れ、太い枝や落石と思われる石が落ちている。もしこの石が私達に落ちてきたらと考えざるを得ない。それでも登っていくとなにやら看板が見える。
「この先は林道です。一般道とは違い必ずしも十分に保全されていません。」
私達はここで事故ったら死ぬかもしれないという恐怖に耐えながらペダルを踏んだ。いつ終わるとも知れないこの坂がただ恐ろしかった。
登り続けるとようやく頂上に着いた。ここまでくれば折り返し地点だと思うと気が落ち着いた。麓から頂上までの時間は約21分, 4.8km, 330m up。勾配はきつくなく、車もいない。道が荒れていたりするが走りやすいと思う。ちなみに頂上には5人ほど自転車乗りがいたのでやはり良い練習場所なのかも知れない。
下って左折の後、すこし登るとスタート地点のオギノパンに戻ってきた。これで一周だ。
オギノパンにはさっきの峠の静けさが信じられないほど多くの人でごった返していた。皆パンを求めてわざわざ遠くからやってきていた。パンを売っているとみられる場所には長い行列ができ、行列に釣られた者がなにを売っているのかも知らずに並ぶ有様だった。際限なく伸びていく行列に、なんとか秩序をもたらそうと店員が必死に行基本変形を繰り返すが、哀れこの行列の行列式は0。正則になることはなかった。
私達は一番短い行列に並び、揚げパン、アンパン、カレーパンを買った。
いやうめえ。これは並ぶわ。外はカリッとしていて、中はもちもち。パンが美味いので何をどうしても美味い。
揚げパンの他にも、アンパン、惣菜パンなど沢山の種類があるので何回来ても飽きない。
まじでツーリングここ来れば??
パンが美味いのでとてもモチベーションが上がる、良い練習場所だと思う。
総走行距離140km, 2000m up